【SUPER DOOPER HISTORY】
永く音楽活動をしていると蒔いてきた種や意識せずにつけてきた足跡がどんどんつながって線になり形になっていくことがあって、それまでやってきた全てのことにに満足が行くはずはなく失敗や後悔もたくさんしてきたけど、これまでの様々な経験に無駄なことなどないと気付かされる。
STUPID PLOTSを始めて約27年、それ以前にやっていたバンドから考えると本当に長く音楽をやってきていて気が付けば自分にとって音楽活動はこれまでの人生の中心になっている。STUPID PLOTSの活動を始めて途中メンバーそれぞれの生活の変化や、自然の流れでしばらくライブをやっていない時期もあった。ただその間もライブは出来ていなかったけど音楽・バンドを辞めたなんて意識をしていたわけではなく、なにかしらマイペースにやっていた。若い頃は海外のバンドやレーベルにコンタクトをとってみる場合手紙しか方法がなかったけど、PC・インターネットを少しずつ活用できるようになって、海外の情報を調べたり、コンタクトをとることもメールで出来るようになっていたし、国内の情報も得やすくなって、本当に便利になったことを実感していた。あまり新しいことが得意な方ではないから、今思えばPC・インターネットの活用は早い方ではなかったというか、かなり遅れていたと思う。
ちょうどその時期にネットで知り合うことが出来たのがイギリスポップパンクIDENTITY,FUNBUGのフロントマンJASONだった。IDENTITY,FUNBUGは若い頃から聴いていた自分にとって本当に特別なバンドだ。1992,3年ごろだっただろうか、どこのレコード店か忘れてしまったけど買った3枚の7”レコード、CRINGER/Karin, J-CHUCH/This Song Is For Kathi そしてFUNBUG/Tezbinetop EP 。この3枚は本当に素晴らしくて聴いたときの感動は印象深く今でも覚えている。FUNBUGを聴いた瞬間はLOOKOUT RECORDSということもあってアメリカのポップパンクバンドだと思った。歌詞カードを見てイギリスのバンドということを知って、絶妙なポップさと哀愁があるメロディー、空気感になるほどー!と納得した。その後、前身のバンドIDENTITYのことも知って音源を手に入れようと探したけどコンピ収録の曲は聴けてもなかなか単独の音源を手に入れることは難しくてインターネットで探して高額でレコードを手に入れたりした。
ある時、IDENTITYのメンバーがネットで直接音源を販売していることを知ってコンタクトをとってみた。それがJASONと知り合うきっかけになった。その後2006年にIDENTITYのディスコグラフィー盤CDが国内でリリースされ、2007年にはIDENTITYとTHE SECTのカップリングジャパンツアーがあった。そのツアーの時一緒にライブをやろうとJASONが熱心に誘ってくれていたのに、ちょうどライブから離れていた時期で共演を果たせなかったことは今でも本当に残念に思っている。ライブに出ることは出来なかったけど当時小学生だった娘二人を連れて家族で大阪のライブハウスにライブを観に行き対面を果たすことはできた。ライブは本当にカッコ良くてずっと聴いていた大好きな曲を生で観れていることが信じられなかった。本当に感動した。そしてなんとサプライズで自分たちのバンドSILKYの曲をカバーしてくれた。夢かと思うほど本当に感激だった。。。。
JASONからのせっかくの誘いに応えることが出来なかったこと、そして自分としては一緒にライブが出来る大きなチャンスを逃してしまったことはもうどうしようもないことだけど、自分がバンドを続けていくことでいつかそれらをカバーできることがあるかもしれないと信じていることも今もまだバンドを続けているモチベーションになっている。なにより同じような年頃の2人の娘をもつ自分と同じ歳のJASONがイギリスから来日してバリバリライブをやっている姿はものすごく刺激になったしライブ活動再始動の大きなきっかけのひとつになった。もしあの時無理矢理やっていてもいいライブを見てもらうことは出来なかったことは容易に想像がつくし、そうなるとその後の活動がどうなっていたか分からない。活動を再開し、まだ出来ていることを考えれば本当に残念ではあったがあの選択は間違っていなかったのかもしれない。。。と正直いうと自分にずっとそう言い聞かせている。
そして時間が流れそろそろまた何か始めよう、と考えるようになってきたころにもう在庫が無いと思っていたSILKYのCDのデッドストックを発見し、もしほしい人がいるのならと思い知り合いのディストロさん達に久しぶりに連絡をとって無料配布してもらった。その後にSTUPID PLOTSのこれまでの音源から50曲を詰め込んだディスコグラフィー盤をリリースした。そしていろいろなことが重なりライブ活動再始動という流れになった。大分端折ってはいるが(笑)STUPID PLOTSライブ再始動直前のおおよそ流れは後のことをその都度計算していたわけではないけどそんな感じだった。
ライブ活動を再始動した2013年以降も新音源のリリースについては積極的ではなかった。それも自分なりの考えとこだわりがあってのことだった。そんな中自分の娘が音楽活動を始め自分のレーベルからCDをリリースすることになって久しぶりにMTRを出してきて家でいろいろ始めると、自分がやりたかったこと、やり残していること、今だからやっておきたい衝動が湧き上がってきて、残しておきたいと思ったアイデアをMTRで録って急遽リリースしたのが2017年リリースのアコースティックEP What Did Change? 。そのリリース直後に次の展開は決めていた。その考えた「オチ」をいつどんな形で、どんなタイミングで発信するかということまで決めていたわけではなかったけど、何かきっかけがあってタイミングが整ったらやる。といった感じで自分の中で構想を持っていた。
今から4年前の2017年、アコースティックという形でリリースしたEP、What Did Change?には続きがあったということだ。
自分にとってバンドとは曲作り、レコーディングやリリース、ライブ、自分たちの企画、、、、など様々な活動が全て絡み合って出来ているものだと思っている。自分自身の考えにこだわってやっていると見えてくる自分の考えと異なるセオリーとかお決まりには流されたくないから、時には流れに逆らい予定調和に身を委ねるようなことは避けてきた。そんなこだわりは傍から見ればくだらないことだったり、ほんの些細な事だったりするし、もっと言えば誰にも気付かれることすらもないまま過ぎていくだけのことだろうと思う。だけどそんな感じが好きだったり面白いと感じてしまうある意味ひねくれた自分がいる(笑)。それは個性・オリジナリティーにも繋がることだと思うし、自分が納得し、自分の中でやり遂げられればいいことなのではないかと思っている。とはいってもやっぱりたまに分かってくれる人がいたら嬉しいことで、どこかにいるかもしれないそんな自分と同じような物好きで少数派でいることをいとわない感覚の人に可能な限り出会えることを期待してこんなに長く活動を続けているのかもしれない。そんな中、地元の仲間と始めたPUNK合宿GIGという企画も自分の一連のこだわった活動のひとつで、自分のいろいろな考えと連動している。PUNK合宿GIGではたくさんのバンドに参加してもらいみんなに支えてもらいながらどんんどん前に進んでいてこれからさらに面白くなっていくだろうと思っていた。。。 そんな矢先、2020年3月コロナが広がり始め状況が一変した。
決まっていた自分達の企画PUNK合宿GIGは全て中止、その他決まっていた全てのライブも中止や無期延期状態になってメンバーや友人とも会うことすらも出来ない状況が続いた。そしてコロナが一旦緩まってきたようにみえていた頃、久しぶりに一緒にPUNK合宿GIGをやっている仲間たちに会って近況などを話した。その時、ライブが出来ないこの時期、こんな時だからこそレコーディングをすることはいいことだよね、ということも話していてもちろん自分もそう思っていた。だけど「STUPID PLOTSは音源録らないんですか?」と訊かれて、その時は「今はまだその気は無いなぁ。。。」って応えた。
久しぶりに音楽仲間といろいろ話すことが出来て沈んでいた気持ちをリフレッシュすることができて、本当にいい機会になったなぁっと思いながら帰宅しPCの電源を入れ、メールを開けるとレーベルをやっている知人から1通のメールがあった。
「JASONの新バンドTHE VEEVERSとSTUPID PLOTSでスプリットCDリリースしませんか?」
その言葉を見た瞬間、散らばっていたこれまで蒔いてきた種、つけてきた足跡、やり残してきたこと、取り戻したい後悔、いくつもの点と点が繋がって一気にタイミングが整った。それは何もできないまま終わろうとしていた2020年の終り頃だった。
2021年、ROADSIDE RECORDSは国内外のバンドをコンスタントにリリースしているFIXING A HOLEと共同リリースという形でCDをリリースする。
「イギリスの新バンドTHE VEEVERSと自分のバンドSTUPID PLOTSのスプリットCD」
THE VEEVERSのメンバーはポップパンク好きには説明不要の80年代から活動しているUKポップパンクのレジェンドIDENTITY,FUNBUGのフロントマンJASONがギターボーカルを務めるバンドだ。今この時期に自分のレーベルROADSIDE RECORDSでこんな夢のようなリリースが出来ること、この機会を与えてくれたFIXING A HOLEとTHE VEEVERS、そしてこの巡り合わせに感謝しかない。
今の状況「でも」出来ることもあれば、今の状況「だから」出来ることもある、逆境に立って失うこともあれば、逆境に立たされたことで工夫を凝らして生まれる新しいこともあるかもしれない。そう自分に言い聞かせて、ずっと持ち続けている想いはもちろん、この歳になってもまだ回収できずに散らばったままのあったはずのたくさんの夢や希望、今もなお引きずっていたり、忘れてしまっていた失敗や後悔、それらをすべてその後のいい結末を迎えるまでの伏線だったと言えるように自分なりにこだわりを持って活動を続けていきたいと思っている。ライブが出来ない今の状況が後に自分にとってどんな時間になるのかは想像もできないけど、きっと何か意味があるはずだし何かに繋がっていく大切な時間なのだと思う。なぜなら自分にとってとても大きな今回のリリースに繋がったひとつの大きな要因、JASONとの出会い。それはSTUPID PLOTSにとってライブ活動をしていなかった表向きには止まっていたあの空白のような期間に起きた事だ。今回共同リリースをさせてもらうFIXING A HOLEオーナーともその時初めて会うことが出来ている。あの頃も当然、後にどんなことが起こるかなんて分かるはずも無ければ、あのライブが出来ていない期間が何かに繋がるなんて期待していたわけでもなかったのだから。どんなにゆっくりで傍から見れば前に進んでいることが目に見えないぐらいのペースでもいい、他人がどう言おうと自分自身の中で歩みを止めなければいいのだと思う。
2021年にリリースが決まったTHE VEEVERSとSTUPID PLOTとのスプリットには個人的にこのような想いが詰まっているし、メンバーにもそれぞれの想いがあるだろう。長く活動を続けてきたTHE VEEVERSのメンバー、そして同じ年齢のJASONにとってもきっといろいろなドラマがあるはずだし、FIXING A HOLE 、レコーディングをしてくれたorange roomスタジオをはじめ今作に関わってくれている皆同様にそれぞれの想いやストーリーがあると思う。これを機会に今作と一緒にそれぞれの過去作品もまた聴いてもらえたら嬉しいことだと思う。
あと、ぜひ今回のSPLITに参加したSTUPID PLOTのこの活動の伏線にもなっている2017年リリースのアコースティックEP What Did Change? も今作と合わせて聴いて楽しんでもらえたら嬉しい。 そして最後にTHE VEEVERSの初リリースの渾身の4曲。これが本当に勢いが溢れまくった怒涛のメロディック&ポップパンクチューンで最高!!ポップでキャッチーなメロディーと攻撃的な勢いもあって流石の一言。いつまでも「やんちゃ」なベテランによる新バンドTHE VEEVERSの最高の初リリース作品に関わらせてもらうことが出来て本当に幸せだ。
TEXT :山口ショウゴ ROADSIDE RECORDS/ STUPID PLOTS / March 2021.
【THE VEEVERS / Big Man Lyric Video】
【THE VEEVERS /Girl From Hackney (lyric video)】
【STUPID PLOTS / What Is Grow Up ? (Trailer)】
【FUNBUG / Tezbinetop 7" EP】
【STUPID PLOTS / What Did Change ?】