THE VEEVERS & STUPID PLOTS / SUPER DOOPER SPLIT CD! のリリースからはや4か月が過ぎた。今回は自分のバンドSTUPID PLOTSとしてもレーベルROADSIDE RECORDSとしても、このような貴重な機会を与えてくれたFIXING A HOLEには本当に感謝しかない。一緒に制作をさせてもらってFIXING A HOLEというレーベルが国内外の多くのバンドをリリースし海外のバンドを招聘してのツアーを手掛けていることが、そのバンドを多くの人に聴いてもらいたいという熱い気持ちや、共感し合える人と人の繋がりをつくりたいという想いから信頼を得て成り立っていることを痛感し刺激をもらった。地方から世界に向けて地に足のついた活動を続けるFIXING A HOLEのレーベルオーナー同道さんに今回のリリースのことをはじめいろいろなことを話してもらった。
( TEXT : Shogo Yamaguchi (ROADSIDE RECORDS . STUPID PLOTS ) 2021 )
Q : Shogo Yamaguchi ( ROADSIDE RECORDS / STUPID PLOTS )
A : Kei Dohdoh ( FIXING A HOLE )
(Interview date: November 2021 )
Q1. 自己紹介とレーベルの紹介をお願いします。
A. 同道慶(ドウドウケイ)と申します。広島県の東広島市という田舎を拠点にFixing A Hole(フィキシング・ア・ホール)というレーベルで活動をしておりまして、イギリスや日本のバンドによる音源の制作・流通や、ツアー・企画のお手伝いなどさせてもらってます。
Q2. SUPER DOOPER SPLIT CD !のリリースから4ヵ月経ちました。共同リリースさせてもらって本当にありがとうございました。今回のリリースの経緯や想いを教えて下さい。
A. 共同でのリリース、こちらこそ本当にありがとうございました!元々はVEEVERSのアルバムをリリースする前提で話を進めていたところ、コロナ禍のロックダウンで4曲しか録音が終わらなくて……
さてどうしようかとバンドと相談した際に、日本のバンドとのスプリットCDはどうだろうという話になりまして、真っ先に思い浮かんだのがVEEVERSのメンバーとも縁の深いSTUPID PLOTSでした。その節は突然の申し出にも関わらず快諾していただいて本当に感謝しております!実のところを申しますと、提案のメールを送る時の手は緊張で震えていました。内容的にも両バンドの良さが出ていて、何よりもバンド同士が相思相愛のスプリットをリリース出来て本当に嬉しいです!
Q3. 制作にあたって大変だったことや印象深かったことなどエピソードを教えて下さい。また完成して無事リリースになりましたが現在の気持ちを教えて下さい。
A. 制作にあたってはショウゴさんと密接に連絡を取らせてもらったので、本当に大変だと感じる事は少なかったように思います。
スプリットをCDで出す際に最も注意すべき事柄の1つ、両バンドで異なるサウンドの音量・音圧をどう揃えるかといった問題も、
STUPID PLOTSの曲を聴いたVEEVERSが刺激を受けてミックスダウン直後の音から再度マスタリングをしてくれて、それを聴いたSTUPID PLOTSがまた微調整をするといった理想的な形で進める事が出来ましたし。無事にリリースされまして、コロナ禍においても多くのレコード屋さんや個人ディストロさんで扱っていただいて感謝の念に耐えません。ライブが早く日常に戻ってきて、ディストロの出店で自分自身の手で直接売れる日を待ち望んでおります。
Q4. レーベルを始めたのはいつ頃ですか、どういったきっかけで始めましたか?
A. 2006年頃、VEEVERSのメンバーでもあるジェイソンが海外のオークションサイトで、かつて彼が参加していたFunbugというバンドのディスコグラフィーのオフィシャルブートレッグをCD-Rで販売してまして、それを工場でプレスされたCDにして日本で流通に乗せたいというのがレーベルを始めたきっかけでした。当時は右も左も分からなかったので、See Her Tonite(ex-Fun Fun Attitude)というバンドのギターボーカルで、ご自身でGrapefruit Moon Recordsを運営なされていたサタケさんにお願いして、See Her Toniteの3rdアルバムをFixing A Holeの初めてとなるリリースにさせてもらうという形でノウハウを教えていただきました。ですので、きっかけとなったFunbugなのですが、カタログナンバーは2番だったりします。
Q5. レーベルでは国内外のたくさんのバンドをリリースしていますね。リリースや海外バンドのツアー招致など海外のバンドとのやりとりは大変なこともあるかと思います。これまで大変だったエピソードがあったら教えて下さい。
A. ええっと、こちらも毎回バンドとのやり取りが楽しくて大変だと思う事は少ない気がしますが、Skimmerが2017年に来日する直前でメンバーの家族が重い病気に罹ってしまい、ツアー自体をキャンセルせざるを得なかった際には多くの方々にご迷惑をお掛けしてしまいました……
他にパッと思い出せる分でしたら、バンド側が飛行機のチケットを間違えて買ってしまい、その航空券がキャンセル不可だったので、ツアーの日程を大幅に変更する事態になった際には少々大変でしたね。ただし、幸いにもキャンセルせざるを得なかった場所での企画者さんやライブハウスさんが多大な理解をしてくれて、日程を変更する分にはトラブルやキャンセル料など発生しなかった事は非常に助かりました。
Q6. レーベルをやってきて嬉しかったことや感動した事、やってきて良かったと思う出来事、エピソードありましたら教えて下さい。
A. ツアーが終わった時やリリースが一段落した時はホッとするのと同時に嬉しい気持ちで満たされますね。 バンドも同じように感じていると分かった時には、レーベルをやってきて本当に良かったと思います。 2018年の夏、Down And Outsのツアー中には西日本豪雨の影響があって、 多くの場所で高速道路が閉鎖されていて非常に厳しい状況だったのですが、 最後のライブが終わった時にバンドが「やり遂げたな!」と抱き合っているのを見た時の写真など、 読んでらっしゃる方にも感動が伝わりやすいのではないでしょうか。
2018年 西日本豪雨の時の状況
Q7. 楽器やアンプなどすごい機材を持っていますね!どういった経緯で集めましたか?思い入れのある楽器やエピソードなどありましたら教えて下さい。
A. 初めての招聘となるDriveを呼んだ際、過去にJ-Churchというバンドが空港の税関で入国拒否をされた事があるのを念頭に置いて、ギターはFender Mexicoのストラトキャスター、ベースはMusic Manのスティングレイと、手持ちの楽器を使ってもらいました。それだけでは足りなかったなぁというのが当時の印象で、招聘を重ねるごとに少しずつ実戦的な楽器を増やすように心掛けていたところ、楽器やアンプを自前の物で統一してツアー前に音合わせの練習日を設けると、各地でライブハウスに着いてからサウンドチェックの時間が明らかに短くなっている事に気付きました。その短縮した時間で、コンビニで買うご飯がその土地の名物へと変わるのは、ヘビーな日程を組んだ時ほど有益になる気がします。ライブハウスに置いてある機材を予備とする事でライブ中の不意なアクシデントにも強くなれますし。自分のツアー中でのローディー的な役割をより広く担えるというのも利点だと思います。また、SamiamやGameface、Spoilersといった他の招聘者さんが日本へ呼んだバンドも僕の楽器を使ってくれた事も嬉しかったですね。 思い入れのある楽器は、ギターだと2本のGordon Smithと日常的に使っているEpiphoneのカジノ、ベースだと大学生の頃に貯金を使い果たして買った1979年製の黄色いRickenbackerの4001が気に入っています。
Q8. レーベルを始めた当初目標や夢はありましたか?
A. 活動を始めた当初はリリースと企画を停滞させない事が目標だったと思います。
それで、継続していく内に新しいリリースや企画でどんどん夢が叶っていったというのが正直なところです。
Q9. レーベルの現在の目標や夢はありますか?
A. 毎年1~2回ほど英国からバンドを呼んでツアーをしていたのを再開させたいです。その時にはVEEVERSも是非とも呼びたいバンドの1つですね。STUPID PLOTSと一緒に各所を回れたら最高です!
Q10. 人生においての重要な5曲(またはバンド、音源単位でも)を教えて下さい。その曲についての思い出やエピソードも教えて下さい。
A. 5つだと絞り切れないので、僕にとって重要なアルバムを順不同で3つ挙げさせて下さい。
01.Snuff - Reach
Snuffが一度解散するまでの3枚の音源って一般的には良い音とは言えないと思うのですが、一度ハマったら抜け出せない魅力があるように感じます。実際、最初に聴いた時には音質が粗いなぁというのが第一印象だったのですが、聴き込んでいく内に大好きになっていました。このアルバムで"適度に粗い音質の魅力"に気付いてから、やっとSnuffy Smile関連のバンドの良さも身に染みるようになったと思います。
02.Broccoli - Home
UKメロディックという言葉を具現化した1枚だと思います。先に「レーベル活動を続けていたら夢が叶った」と書きましたが、このBroccoliの音源の三部作(1st、2nd、シングル集)を再発できて、再結成の日本ツアーも大成功で実現、さらに総勢38バンドによるBroccoliへのトリビュートアルバムまで出せた事は好例かと。
03.Navel - Uneasy Recordings:1994-1999
僕が購入した時には既に「Uneasy」のオリジナル盤は売り切れていて、ボーナストラックが盛り込まれた再発盤「1994-1999」でした。上のタイトル表記は「1994-1999」が売り切れた後にバンドが再発した際の題名にしてあります。これだけ再発が重ねられている事も、この音源が名盤である事の証左ではないでしょうか。Navelの皆さんには音楽はもちろん、他にも多岐に亘るカルチャーを教えていただいて、人生の大切な糧となっております。
Q11. これまでに観たライブで特に印象深いライブを3つ挙げて下さい。思い出やエピソードも教えて下さい。
A.
01.Leatherface - 2010年9月8日@名古屋・ハックフィン
ライブ自体も素晴らしい物だったのですが、早めに会場へ行ったらギターのディッキーを周辺で見かけて、何を探してるの?と訊いたら「ビールを半ダースほど安く買える店」って事だったので近くにあるダイエーに案内して、レジで奢るよって話しましたら「よし、じゃあライブまでの間、一緒に飲もう!」って事になりまして。その際、特にGordon Smithという英国産のギターをカスタムでオーダーする際のコツなど聞けた事は僥倖でした。彼にアドバイスをしてもらって作った2本のギターは、その後の僕が招聘したツアーで大活躍いたします。
02.Navel - 2015年7月24日@ウェイクフィールド・プレイヤーズ
Navelの2度目のUKツアーにご一緒させてもらったのですが、空港の税関でメンバーの内二人が強制送還になってしまいまして……
しかし、招聘者であるSkimmerの面々は諦める事なく、Navelが持っているビザの切り替えや行政への働きかけを続けてくれました。それが実を結んで入国拒否を受けた二人も無事に英国へ入る事が出来て(奇跡的というよりも奇跡そのものだったと思います)、
UKツアーを仕切り直しする一発目となったライブが強く印象に残っております。英国に滞在していた間は色々な人に励まされたり、助けられたり、刺激を受けたりで、これ以降、僕が日本に呼ぶバンドは、この時のツアーでお世話になった方々が多数を占めるようになりました。
03.The Sect/Identity - 2007年9月8日@大阪十三・ファンダンゴ
初めてショウゴさんにお会いできたのが、このライブだと記憶しております。ライブの方は、とにかくIdentityの勢いが凄まじくて圧倒されたのを覚えていますね。The Sect/SkimmerのケビンやIdentity/Funbugのジェイソンの存在は、その後に他の英国のバンドをリリースする際にも大きな助けになってくれました。両者とも長いキャリアで顔が広いですし、誰に対してもフレンドリーですので、リリースしたいバンドと直接連絡を取る前に仲介をお願いする事でスムーズに話を進められたケースが多かったと思います。
Q12. これまで企画してきたライブ(ツアー)で印象深いライブをいくつか教えて下さい。思い出やエピソードも教えて下さい。
A.
2012年にProtectorsを招聘したのは1つの転機でした。メンバーが以前に参加していたChopperとは大きく音楽性を変えていたので、当初ツアーを発表する時までCDの売り上げは思うようにいかなかったのですが、その音楽に触れた各地の企画者さんや対バンの皆さんによる奮起のおかげで各所盛況となる事ができました。このツアーでは初めて四国や九州を日程に加える事が出来ましたし、その後も四国と九州までを継続して回れているのは、その場所で頼りに出来る方々がいらっしゃるからでして、そういった方々との結び付きを強固にしてくれたのが、このツアーであったように思います。
Protectors / 2012年8月12日@鳥栖・バプール
Drive (2007年)
Kobanes (2009年)
Joyriders (2009年)
Protectors(2012年)
Skimmer (2013年/2015年)
Southport (2015年)
Southpaw (2016年)
Broccoli (2016年)
Trouser Mouth (2016年)……ex-SNFUのメンバーを含むバンドで、運転・物販・通訳係で同行させてもらいました。
Headsparks (2017年)
Down And Outs (2018年)
Harker (2019年)
Crocodile God (2019年)
こうして海外からのバンドを招聘したのを一通り並べてみると、やはりどれも印象深い思い出があります。
もし読んでらっしゃる方の記憶に残るライブがありましたら、これに勝る喜びはありません。
Q13. 最後に読んでくれた皆さんに一言メッセージをよろしくお願いします。告知もありましたら!
A. 長々とお付き合いをいただき、ありがとうございました!THE VEEVERSとSTUPID PLOTSのスプリットCD、是非是非聴いてみて下さい!次の春にはリリース活動を再度活発にしていく予定ですので、Fixing A Holeというレーベルの名前だけでも覚えていただけたら嬉しいです。インタビューの機会を与えて下さったショウゴさんにも厚い感謝を。
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