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2021年7月、STUPID PLOTSはバンド音源として21年ぶりのレコーディング音源をリリースした。今回の作品にはこれまでと大きく変わったことがある。1995~2000年の間にリリースしてきたデモテープ、7”レコード、3枚のCD(アルバム)とVA作品への参加曲、それらは全て4tr カセットMTRで録ってきた。そして今回、27年目にして初めてスタジオでレコーディングをした。いつも練習で使わせてもらっているスタジオ orange room を経営しExperimental crossbreedというバンドをやっているan-pan君にレコーディングを依頼した。スタジオの休憩スペースとしても使っている和室にそびえたつ巨大なCD棚を見ても分かるように音楽に対するこだわりはすごいし、話せば話すほど音楽に対しての真摯な姿勢が伝わってくる。レコーディングとなればそのバンドの望む音と客観的に見たそのバンドの個性を考え、バンドにとっての「良い音」をバンド側の意見や希望を聞いて一生懸命模索しながら作ることに時間も労力も惜しまない人だ。もしリリースの機会があったらそんな彼に頼もうと決めていた。今回本当に自分のたくさんの無理や難題を聞いてくれた。一緒につくった今回の何周も回って辿り着いたシンプルな「音」にSTUPID PLOTSの「これまで」と「今」が詰まっている。本当に一緒に最高の作品を作ってくれて感謝しかない。今回はそんな「音楽」「音」にこだわり続ける an-pan君にレコーディングのことをはじめいろいろな話をきいた。

(TEXT: Shogo Yamaguchi (STUPID PLOTS / ROADSIDE RECORDS) /2021) 

Q::Shogo Yamaguchi ( ROADSIDE RECORDS / STUPID PLOTS )

A::an-pan  ( Experimental crossbreed / orange room ) 

(Interview date: September  2021 )

Q1. 自己紹介と現在の活動について教えて下さい。

A. こんにちは。今日はよろしくお願いいたします。僕はExperimental crossbreed(以下エクスペ)というロックバンドでデジタル楽器のプログラミングを担当していまして、福井県坂井市でオレンジルームというスタジオを経営しています。そのオレンジルームでバンドのレコーディングや、いろんなイベントのPAもさせていただいてます。また、FM福井さんの朝の番組の音響とディレクションも担当しております。色々やっているんですが、自分が参加しているバンド、エクスペは現在コロナ渦中ということで表立った活動はしていない状態です。そのエクスペは電子音と生演奏を有機的に融合した音楽性の4人組バンドで、ロックバンドでキーボードを使っている一般的なバンドとは一線を画す存在だと自負しています。メジャーや海外にはお手本とするようなバンドもありますが、インディーズでは似ているタイプのバンドにはほぼ出会わないですね。いろんな要素を導入しているバンドですし、ジャンルが不明でもいいんです。オルタナティヴに感化されて音楽を志した身ですので、そうあるべきだと思っています。またエクスペ結成以前にもデジタル楽器を使ってソロ活動をしていましたし、エクスペ結成以降もたまにソロでのライブ活動をしています。エクスペとソロの音楽性の違いはメンバーの有無ぐらいで、自分の音作りには明確な差は無いですね。ソロ曲をエクスペに持って行ったり、メンバーが難色を示した曲はソロで演奏したり。自曲への愛着はありますからどこかで形にしたいなと。発表する選択肢が複数あるのは作曲家として健全かとも思いますね。実は、8月にとあるイベントにエクスペのベースTotaniと二人で出演の予定でしたが、こちらのイベントもコロナ感染拡大で中止となり久しぶりのライブ演奏も叶わず・・・でした。その時の曲は書き下ろしの新曲で、中止になったイベントの雰囲気にあうようにやや和風なテイストを加えた新機軸の曲でした。せっかくなので音源化してサウンドクラウドにアップしてあります。

【Experimental crossbreed】

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Q2. 今回STUPID PLOTSのレコーディングを担当してもらってありがとうございました。 レコーディングをしてみての感想やエピソード、大変だったことなどありましたら教えて下さい。

A. STUPID PLOTSのレコーディングは結構斬新でしたね。特にドラム録りが斬新でした。今作はタムやフロアをほとんど使わない曲ばかりで。そのリズムアレンジに驚いたのですが、使わないなら最初からタムやフロアをセットに配置しないところから始まりました。重さよりもスピード感を最優先するアレンジゆえにの判断ですね。タムやフロアは低音の振動があるので、叩いていない部分でも音が低音で濁るんですよね。それらがセッティングされてもいないから、より音がクリアになりました。上手くいったのはギターとベースの録音。特に変わったことをした訳ではないですが、ギターとベースの生音をしっかり作ったので結果として理想的な音になりました。今はレコーディングはDAWでなんとかするって風潮ですけど、実はそもそもの生音が一番大事なんですよね。大変だったのは山口さんもおわかりだと思いますがヴォーカル(笑)ミックスバランスが絶妙で微調整を繰り返しました。山口さんのディレクションが的確だったので、それに従う形で進行しました。ヴォーカルの音量バランスの答えってヴォーカリスト本人にしかわからないんですよね。外部エンジニアはその答えを導くのが役目というか。仕上がった音は実にSTUPID PLOTSらしい、山口さんの思惑通りの馬鹿馬鹿しいほどのスピード感(いい意味で!)とポップ感覚を持った作品になっています。

【STUPID PLOTS: Recording at orange room 2020】

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【STUPID PLOTS: Recording at orange room 2020】

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Q3. リリースから2か月経ちました。今回はイギリスのバンドTHE VEEVERSとのスプリットCDでした、 完成品を聴いての感想を教えて下さい。

A. THE VEEVERSとのスプリットという事で、当然ではありますが、2つのバンドの音が違うなと。重量感のあるTHE VEEVERSと、それが全くないスピード感最優先のSTUPIDPLOTSの落差が面白かったですね。一口にポップパンクと言ってもこれだけ切り口が違うものだと思いました。サウンドのニュアンスは異なりますが、STUPIDPLOTSも世界各地のポップパンクファンが耳にすべきバンドだと再認識しましたし、地元にこんなバンドがいるというのは誇らしいですね。STUPID PLOTSの魅力は良い意味で貫禄の無いところ。25年ぐらいやっているとどうしてもバンドの歴史みたいなものを感じさせるバンドがほとんどなんですが、そうじゃ無い。これって簡単じゃ無いと思うんです。今後のSTUPID PLOTSに期待するのは・・そうだなあ、15年ぐらい未来には年金とか体調の事とかMCで喋りつつも今と全く同じスタイルと楽曲で活動していて欲しいってのは無茶な要望でしょうか?曲のテンポとキーは下げたりせずに(笑)

【THE VEEVERS &STUPID PLOTS:

SUPER DOOPER SPLIT CD !】

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Q4. 個人のことをいろいろとお聞きしていきたいと思います。長く音楽活動をしてきていると思いますが、バンドを始めたきっかけや背景を教えて下さい。  

A. 中学生の時に1980年代末期のバンドブームで、クラスメイトに誘われたのがきっかけです。当時の自分が通っていた中学では主に「BOOWY、BUCK-TICK派」と「ブルーハーツ、JUN SKY WALKERS、ユニコーン派」みたいな派閥がありました。洋楽を聴いている人は周りには居なかったです。日本のロックが商業として確立した時代でしたね。TMネットワークやX(JAPAN)もみんな聴いてましたけど実際の演奏の猿真似すら出来なかったので、それらはあまり人気が無かったような印象があります。いつの時代も同じだと思うんですが、ティーン達が猿真似でもいいからコピー出来そうなバンドって流行りますよね。で、イントロはコピー出来てもソロがコピー出来ないとか。そうなると燃えますよね。僕の担当楽器はキーボードで「BOOWY、BUCK-TICK派」の界隈でした。その時点でハードロックやブラックミュージックの要素が希薄というか、パンク、ニューウェイヴ、英国ロックが大きくルーツとして自分の中に出来上がりました。だから当時から音楽の趣向は変わっていなんですよね。拡大して深化しているだけで。のちに20歳ぐらいでTHE CUREとかBAUHAUSを聴いても「あ、BUCK-TICKと構造は一緒だ」とか。その時の中学のバンドはそれぞれ高校が別になったり、進学しなかった人もいたりと曖昧な感じで終わりました。高校の頃には隠れてバイトして簡単な打ち込みが出来るシンセを買って一人で打ち込みしてました。聴いていた音楽はSOFTBALLETやフリッパーズギター、電気グルーヴ、THE MAD CAPSULE MARKET’Sなど。洋楽はMINISTRYとかJESUS JONESとかを一人で。当時その感覚を分かち合えるような人は・・・いるわけないんですよ(笑)ポジパンとかインダストリアルとかネオアコとか言っても通じないですから。まあ、坂井市のCD店ではなかなか洋楽が入手できなかったんですよね。興味を持った洋楽バンドがあってもなかなか聴くことが出来ない。今はネットでどうにでもなりますけど、当時はマイナーな洋楽には手が届きませんでしたね。田舎町のCD店でDAFを探しまくったり(笑)結局は今挙げたバンドってバラバラなようで全部ニューウェイヴなんですよね。大人になってからCDを爆買いし出したのもこの時期の抑圧があったからかも知れません。思えば自分は10代後半から20代前半の頃には音楽リスナーで、20代中盤からはソロでのテクノミュージシャンみたいな感じだったので、あまりバンドマンみたいな時期ってなかったように思います。そういう意味ではかなり遅咲きなバンドマンなんでしょうね。ただ、一人で音楽を聴きまくった耳の蓄積が糧になっているのは間違いないですね。でも、活動を具体化させたいと思ってもデジタルと生演奏を融合したバンドに参加したいというプレイヤーになかなか出会えなかったというのは実際にありました。演奏や機材調整が複雑ですからね。でも、デジタルを使うバンドも今や当たり前で若いバンドは誰もがデジタル同期をしたがりますし。自分の感覚は間違っていなかったし先駆的だったと思います。30歳の時に元FUZZBOMBSや元browny circusのメンバーらとエクスペを結成出来たのは幸せな事でした。タイミングが合ったんでしょうね。

Q5. スタジオの経営や音響の仕事を始めたきっかけはありますか? またどういった活動をしていますか?

A. オレンジルームというスタジオがいわば自分にとっての仕事場になるんですが、そもそものきっかけは自分の住んでいる福井県坂井市にスタジオが無かったからなんです。もしや需要があるのでは?と思い8年前に開業しました。結果的に坂井市のみならず、いろんな地域の方にご愛顧いただいて感謝ばかりです。オレンジルームを始める数年前ぐらいからレコーディングやPAエンジニアもやってます。エンジニア業のきっかけは友人のバンドのレコーディングや知人のイベンターにPAを頼まれる事があったからです。音響専門学校とかには行っていないんですが、やればやるほど自己の成長に繋がっています。元々デジタル楽器を使用する特殊なタイプのミュージシャンでしたし、より深く「音」というものを追求したくなったんですよね。その追求は今もこれからもずっと続くんだと思います。自分としては「その場の音を最高のものにする!」という意味で自分の曲もレコーディングもPAも垣根は感じていません。

【orange room studio】

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【orange room CD shelf】

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Q6. ラジオのディレクターもしているということですがどういった経緯で?

A. コロナの事もあって緊急事態が宣言されるとスタジオも音響の仕事も減ったりしますね。昨年の春先頃にコロナが拡大してスタジオ予約やイベントPAの仕事のキャンセルが相次いだんですよね。これ(コロナ)は一過性のものじゃなさそうだと思っていた頃に、FM福井さんより「朝の番組の音響をお願いしたい」という趣旨の電話をいただきまして。自分のスキルを使える安定した仕事はありがたいですし、二つ返事で快諾させていただきました。まあ、最初の2ヶ月ぐらいは放送事故までには至らないものの、上手くいかない事も多かったですね。今はある程度コツも掴んで慣れてきましたけど、初心を忘れずに緊張感を持った仕事をしたいです。今年(2021年)の夏から番組で放送する楽曲も選曲して欲しいと言われまして。これも即答で快諾しました。今まで5000枚ぐらいのレコードやCDを買ったし、色々な曲を知っているつもりはありますので。でもオルタナティヴな自分の趣味ばかりをラジオ番組で反映させようとは思いません。そういう音楽はヘンなんで(笑)というか、朝のラジオからそういう曲ばかりが流れてくるのは悪い意味で不自然だと思うんですよね。だからちゃんと仕事でラジオから流れてて自然であろう曲を自分の好みと価値観を交えつつ選んでいます。たまに変化球でTELEVISIONの「See No Evil」とかかけて「足のイボ~」って空耳しません?だとかパーソナリティさんと笑ったりしてますけど。趣味はあくまで変化球。オルタナティヴがいつもラジオで流れてたらオルタナティヴじゃないですし。ただ、ちょいちょい地元のバンドの曲も流していきたいですね。先日もSakuraさんの曲や松波哲也さん、水咲加奈さんの曲をかけさせていただきました。STUPID PLOTSの曲は・・・1分しかなくてミキサー操作的に大慌てです(笑)。曲が始まって数十秒後に曲紹介の時間になっちゃう(笑)。あ、でも1分しかないユニークな曲としてあえて面白いかもですね!

Q7. バンド(音楽活動)を始めた頃の夢や目標はありましたか?

A. おそらく山口さんもそうなんじゃないかと思うんですが、自分が音楽を始めた1990年代には日本のメジャーレーベルには全く魅力を感じませんでした。10代の反抗期とも相俟ったでしょうね、巷のヒットソングを敵にさえ感じていて。また、その頃はプロとアマチュアの使ってる機材、買える機材の金額に雲泥の差がありました。雑誌でプロの機材の写真を見ても難しそうでしたしこれは無理だなと。だからメジャーデビューしたいとかプロを目指そうとかは思いもしませんでした。冷めた子どもだったんですよね。逆に今ってプロもアマも同じMacBookとCubaseを使っているので、根本的な力量が発揮されますね。よく若い方が言いますね、「プロの人と同じソフトとマイクを買ったのに同じ音にならない」とか。プロはプロで「苦労して買った高額機材とほぼ同様なソフトがフリーで手に入るようになっちゃた」とか。混沌としていますが面白い時代になったと思います。話は戻って、95年以降ぐらいかな、日本人のミュージシャンが海外で作品をリリースする事が増えて。それはとても励みになりました。誰にも言えませんでしたが、その頃の夢は小さくてもいいから海外のレーベルから作品をリリースする事でした。その夢はエクスペで30歳ちょいの頃に叶ったんです。カナダのレーベルからお声掛け頂いて、アルバム一枚をリリースして北米のインディーチャートの5位に入ったんですよね。ここだけの話ですが本当に嬉しかったです。同時に夢が叶う瞬間って何だかあっけないな、実感がないなとも思いました。

Q8. 現在も新たな目標はありますか?

その後は夢や目標もなくて、バンドはあるしライブのお誘いもあるし・・・とやや淡々とした時間が過ぎていきましたが、2016年に敬愛するミュージシャンが続々と他界してしまいまして。それまであまり真剣に考えてこなかった、「自分の終わり=自分の音楽の終わり」というものを強く意識するようになりました。当たり前なんですが人間には寿命ってものがあるんだと。そこで20代ぐらいの頃から漠然といつかやってみたいなと思っていた、変名での作品リリース、架空の映画サントラ。これを形にしようと思い立ったのも2016年。いつかやりたいと思っていても思っているだけでは駄目ですし、アイデアは具体化しないと何の意味もありませんから。最近、お年寄りの健康寿命って言葉がありますけど、ミュージシャンの健康寿命って?と考えると聴力や体力を思うと、まあ60歳ぐらいでしょうか?もちろんそれ以上の年齢でもハイレベルな音楽を奏でている人もいますけど。だとしたら自分にはあと15年ぐらいしか無いんですよね。「いつかは」なんて呑気な事は言っている暇は無いんです。そして5年ほど水面下で曲を作って、今年の春にNOTORIOUS ROCK RECORDからイギリス人の精神科医ミュージシャンって設定でMIKE NEWFIELDという変名でCDサントラアルバム「In The Space Or Sea?」と7インチレコードでのシングル「(We Got)Two Years」をリリースしました。CDだけじゃなく7インチレコードも夢でしたし。エイフェックスツインやオウテカが変名で作品をリリースしていたのが変名を名乗るきっかけでした。Mikeのプロフィール設定がありまして。1969年にロンドンで生まれて、若い頃にはインディバンドでベースを担当してた設定なんです。その後バンドメンバーのオーバードーズ死と解散をきっかけに精神医学の道に進み、ダンスミュージックのプログラミングに開眼、現在は精神科医として働きつつ音楽を作っている…という妄想も激しい謎な設定なんですが、実は僕自身がその時代にロンドンに生まれて、その経歴を辿りたかったという願望から生まれた設定なんです。名前もMIKE OLDFIELDのパロディだし架空のサントラってコンセプトも10ccのオマージュなんですが。勘のいいロックファンの方なら言わずとも伝わると思います。気持ち込めて作り過ぎたので時間がかかりましたが、ゲストヴォーカルのSakuraさん、ギターを弾いてくれたTAGO&MAGOSのメンバー、ラップではMC GOSHIP、ギムレットの石黒くんには作詞、元TRiNKA FiVEのナオキくんにはギター、ピアノに水咲加奈さん、ギタリストの石森さん、yurayurayukoさんのシンギングボウルにて協力いただきました。ジャケットアートの乙女椿さん、ジャケットデザインのタクヂくんには心から感謝しております。おかげで悔いのない作品に仕上がりました。完成した時点で夢は叶えたようなものなんですが、作品を世に送り込んでこそ夢は成就するのでしょう。多くの誰かの耳に一石を投じてその人の心に爪痕を残したい。それが現在の目標ですね。

【MIKENEWFIELD / 7"EP & CD】

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Q9. 人生においての重要な曲を5曲挙げて下さい。 それについて思い出やエピソードあったら教えて下さい。

A. その日の気分によって変わりますが、以下は自分にとって重要な作品です。

・BRIAN ENO 「NERORI」アンビエントの立役者のイーノですが、これは一曲入りアルバムで53分間ぐらいずっと同じような電子ピアノが鳴っているだけんです。究極のミニマルミュージックで真剣に聴いていると頭がおかしくなりそうです。

・SOFT BALLET 「愛と平和」ドラムやギタリストがいないバンドってのも異色ですが、ヴォーカルにディストーションがかかっているのにビックリしました。(カラオケボックスのマイクにBOSSのディストーションをつないで遊んだのも良い思い出です。)当時は自分も高校生でしたが、以降はどんなアヴァンギャルドを聴いてもビックリしたりしなくなりました。テクノは軟弱というイメージを破壊してくれたバンドで、やり方によってはロックよりも過激なサウンドを出せるぞと勇気つけられました。デペッシュモードやNINE INCH NAILSなどと比較されがちですが、どことなく中近東や東南アジアを思わせる旋律があるのが特徴だと思います。余談ですが、SOFTBALLETって当時の日本のバンドの中でも最大級の爆音バンドだったんですよ。コンサートホールのシャンデリアが低音の振動で落下したって伝説も残っていますね。

・DAVID BOWIE 「EARTHLING」ボウイが50歳の時の97年のアルバムなんですが、すでにキャリアもセールス実績もあるロックスターとして不動の地位にいるはずなのに、このアルバムではドラムンベースを導入しているんですよね。無難な事をしないチャレンジ精神に衝撃を受けました。

・RCサクセション「シングル・マン」初めて聴いたのは30歳前後かな。洋楽を一通り聴いて、邦楽のパンクやニューウェイヴを聴きだした頃です。特に好きなのは後半、レコードだとB面ですね、これは言葉に出来ないぐらい鋭く刺さりました。神がかり的な美しさと恐ろしさがあります。好きなんですけど滅多に聴かないんです。再生するのに勇気が要るんです。

・BOOM BOOM SATELITTES 「OUT LOUD」日本人なんですがヨーロッパでデビューしてから逆輸入的に日本でもデビューしたのがかっこよかったです。エレクトリックなサウンドですが、パンクやマンチェスターのバンドの臭いを感じましたし、新しい形のロックだと感動しました。クラブミュージックにしては変拍子が多すぎるしロックにしては無機質だ、という意見もあったみたいですが、むしろ自分にはそれが良かったですね。ギターヴォーカル、ベース、ドラムという典型スリーピース+デジタル楽器という編成も憧れました。デジタル機材もほぼAKAIのサンプラーしか使っていなかったのにもパンク精神を感じましたね。

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Q10. これまでに観たライブで特に印象深かったライブを3つ挙げて下さい。 思い出やエピソードあったら教えて下さい。

A. これもさっきの質問と同様にその日の気分によって変わりますけど、今パッと思いついたのは以下です。

・「BUCK-TICK 1992年@横浜アリーナ」高校生でしたが平日だったので学校をサボって横浜アリーナまで行きました。だからよく覚えているのかも知れませんね。特に印象に残っているのはオープニングで、一曲目の演奏が始まってからも数分間もステージの幕が上がらない演出だったんです。その後幕が上がってからも照明は終始暗くて、バンドの姿ははっきり見えない状態で。隠す事でより観たくなる心理を逆手に取ってるんだと思いました。MCもほぼ無く、選曲もヒット曲を除外したダウナーな曲ばっかりで全く盛り上がったりしない。むしろアート志向なのが伝わりました。

・「ジレンマ 1999年@NAKED APE」既に解散した福井の友人のハードコアバンドですが、速い・うるさい・おっかない(見た目が)と三拍子そろった素晴らしいバンドでした。不機嫌そうに現れてギターのフィードバックから始まって、楽器全体がユニゾンしまくるアレンジと絶叫ヴォーカル。MCも無く、叩きつけるようなひたすら演奏が20分ぐらい続き、マーシャルキャビの前にギターを置き去りにしてフィードバックさせまくって怒ってるみたいにステージを降りる・・・。結成当初から速いなと思っていましたが、バンドが熟していくに従って同じ曲も更に高速化してました。今初めて公言しますが、僕がライブでMCなしなのは実は彼らの影響なんです。それまでは最低限の挨拶ぐらいはしないといけないと思っていましたので。

・「BIG FACE 2001~2002年大晦日ライブ@BUTTER」福井のパンクバンド。長年お世話になっている先輩のバンドなんです。頭は上がりません、絶対に。上記のライブからも僕はMCなんかしない、客がどう思おうが勝手にやる!みたいなバンドが好きなんですが、このBIG FACEは異常にしゃべるんですよね。下手したら演奏時間よりMCの方が長い(笑)でも、曲も歌詞も良くて彼らのアルバムをレコーディングするのがエンジニアとしての夢でもあります。で、この2000年前後は大晦日のライブには毎年彼らがカウントダウンしてたんです。23時59分を過ぎた頃からカウントダウンを始めるんですが、客の声が小さいとか声が揃わないとかの理由でカウントダウンをやり直しさせたのにはビックリでしたね。カウントダウンの意味がないのが面白くてパンクらしくて印象に残っています。

Q11. これまでの自分のライブで特に印象深いライブを教えて下さい。

A. 東京のWRENCHや大阪のBALZACとのライブは思い出深いですね。あと初めてエクスペでライブをした時。あの高揚感は今後味わうことは出来ないんでしょうね。それと地元のトオル君(unknown/velvet)とはマブダチなんですが、彼と遊びの延長でやってた、赤い衝動というバンドでのライブは笑いが止まりませんでしたね。メンバーがそれぞれホームレス、ゲイ、セクシーナース、暴走族、謎の痴女のコスプレをしてお酒をぶちまけたり客を殴ったりしては暴れたりするスタイルのバンドだったんですけど、僕も女子高生のコスプレをして「エマちゃん」だとか名乗ってました(笑)僕はどちらかというと真面目なミュージシャンの印象を周囲に与えていたみたいなんですが、徹底してバカをやりましたね。真面目にバカをやるというか。活動していたのは40歳前後かな、いい歳してメチャクチャをやれたのは面白かったですしありがたいことです。富山MINORITYだったかな、お呼ばれしてライブに行くのに会場を汚してはいけないとか言ってフロアにブルーシートを敷いたりして。あとヴォーカルの子のリハはどこまでならマイクケーブルが伸びるかの確認(笑)音量や聴こえ方をチェックするとかじゃなくて(笑)

 

【Flyer : with WRENCH, BALZAC ... 】

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Q12. 先日10年間毎日SNSで1曲紹介するという偉業を達成しましたね。お疲れ様でした! その活動への想いとエピソード、やり遂げての感想を教えて下さい。

A. お言葉ありがとうございます。10年前ですと、30代半ばだったのですが、いろんな世代のバンドマンと対バンすると打ち上げなどで「普段どんな音楽を聴いているんですか?」と問われる事も多くありました。その度にその時々に聴いていたロックの名作やジャズやレゲエミュージシャンの名前を挙げていたのですが、皆さんビックリされるんですよね。「もっとテクノばかりだと思ってた」と。自分としてはテクノもロックも垣根はありませんし、例えば自分はストーンズの魅力を理解するのには時間がかかったんですが、わからないと感じた音楽も「嫌い」で済ませずに「良さがわからない自分が未熟者なんだ」と思ってましたので。よく若いバンドマンには「1000枚聴け!」とか言ってましたね(笑)もちろん今も嫌いな音楽もありますけど(苦笑)ただ、こういうネガティヴな気持ちも無くしてはいけないと思うんですよね。ロックミュージシャンとしては。そもそも10年前の雨の日に突然思い立ってビートルズの「RAIN」をアップしたのが始まりで、同時にその時に決まっているライブの告知もしていこうと。まあ100日も続けたら立派だろうと思っていたら、あの曲もこの曲もこのバンドも!と10年続けられましたし、自分と自分が好きな音楽を振り返るのに良い機会でした。ここ一年半はコロナでイベントも少ないのでライブ告知は乏しかったですが、ずっとライブ告知が出来ていたのもありがたいものです。あらためてライブハウスブッキングマネージャーさんやイベンターさんに感謝の意を伝えたいです。最終的には10年ぴったりの3650日目に同じくビートルズの「THE END」で終われたらいいなと思っていましたが、それだとかっこよすぎるので蛇足でもう一日だけ書きました、しかも自分の「THE END」という曲で。本当に蛇足なのが自分らしいと思うようにしています。自らが築いた栄光を自ら壊すっていうのはちょっとした快感でもありました。今はちょっとだけ抜け殻状態ですね。ついつい今日聴いた曲をアップせねばと思っちゃうんですよ。

Q13. 最後に読んでくれた皆さんにメッセージをお願いします。あと告知もありましたら!

A. このインタビューが出る頃には終わっているんですが、9月25日に福井CREMEにてMIKE NEWFIELDの名義でライブをします。僕がMIKE NEWFIELDの中の人でしたというオチなんですが、どうやら本当にイギリス人の精神科医だと思っている人がいたみたいで、しめしめと思う気持ちと同じぐらいにゴメンと思っています。でも笑って聴いてくれたら嬉しいですし、自分の人生を総括した音から何かしらを感じ取ってくれたら嬉しいです。でも、ここで終わりではないですし、もっともっと深く高く音楽を追求して参ります。敬愛するブライアン・イーノが自らをノン・ミュージシャンと呼んだように、僕も演奏技術や知識理論を超越した次元に辿り着きたいんです。音楽ジャンルの垣根や固定概念からの脱却をしつつロックの美学を形にする事が自分の使命だと感じています。なんだか大袈裟ですけど本気です(笑)ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

Contact : an-pan ( Experimental crossbreed , STUDIO orange room)   https://www.facebook.com/seiji.a.nakamura

MIKE NEWFIELD/ In The Space Or Sea?  CD

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THE VEEVERS & STUPID PLOTS / SUPER DOOPER SPLIT CD !

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​About【STANDING TALK AT ROADSIDE】➡ HERE

【MIKENEWFIELD / Original Sound Track Trailer】

【MIKENEWFIELD / Guest Vocal : Sakura】

【STUPID PLOTS / What is Grow Up ? & What Did Change ? 】

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