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【帯と配信】

2021年3月16日、2020年7月にリリースしたSakuraの3rd CDが全曲ストリーミング配信解禁になった。

CDをすでに持ってくれている人やダウンロードしてくれた人も、初めての人にもぜひたくさん聴いてもらえたら嬉しい。

実のところ自分は音楽は基本的にはCDを買って聴いていて、現在まだサブスク音楽配信サービスを利用してはいない。というかまだガラケーを使っている。音楽を取り巻く環境が時代によって変わっていくことは自然なことで、音楽の楽しみ方の選択肢が増えることはとてもいいことだと思う。自分は微力ながらもレーベルとして音源をリリースする立場でもあって、CDをリリースするときは”音”だけでなく盤面や印刷物のデザインや言葉、どんな仕様にするかなど手に取ってもらった人にいろいろなことが伝わるように考えて作っている。今後もしCDが無くなって配信だけになると、これまではあったその音以外の部分に対する感触や楽しみは少なくなっていくということになるだろう。”音楽を聴く”ということに含まれていた、音以外の様々な感覚が削がれていくということになると思うと、音以外も楽しんできた古い時代を体験してきた自分としては少し寂しく、そんな機会が無くなることはもったいない様な気はするが、そういった自分が慣れ親しんだ時代に固執した古い考えは、新しい時代の流れの中に気のない相槌とともに消えていくのだろう。今現在新しいことでも20年後には古いものになっているように時代の移り変わりを誰も止めることはできない。いろいろな考えがや意見が飛び交っていたレコードからCDに主流が変わろうとしていた時代の狭間をついこの間のことのように思い出す。

自分なりにこだわった音楽を聴き始めた中学生(1982年~)の頃、聴く音楽がどんんどんマニアックな方向へ進んで、地元(福井)ではなかなか買えなかった輸入盤のレコードを東京や大阪、名古屋など県外のレコード店から通販で買うことが多くなった。初めて買った輸入盤は当時激しい内容とジャケットで話題になったW.A.S.P. / ANIMAL (F**k Like A Beast) 12” EP だったと記憶している。地元には1件だけマニアックな輸入盤を扱う店があったけど自分の好みのジャンル中心の店でなかったからなかなかほしいものが見つからなかった。それでもそこには小遣いが入ったら何か入っていないか自転車で2,30分かけてしょっちゅう足を運んだ。

【初めて買った輸入盤  / W.A.S.P.】

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【中学時代に買った輸入盤 】

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当時通販でレコードを買う場合は電話で注文をして現金書留で代金を送るという方法で、注文してから届くまでに1週間ぐらいはかかった。

その待ちきれない時間や、学校から帰ったとき12インチサイズの段ボールが部屋に置いてあった時の高揚感、ドキドキしながら封を開け、レコードプレーヤーにレコードを乗せて針を落とす緊張と興奮は最高のひと時だった。そしてあの輸入盤レコードの独特の匂いも大好きだった。

そうやって手に入れたレコードは聴いたときに好みでなかったとしてもやっと手に入れたんだからと、良さがわかるまで繰り返し聴いた。

​輸入盤でも国内盤でも少ない小遣いをはたいて買ったレコードは自分にとってどれも貴重だったし今でも思い入れがある。最初に針を落とした時には良さがわからなかったレコードも何度も聴いたり、しばらくしてから聴きなおしたりすることで好きな音楽の幅も自然に広がった。何年もたってから聴きなおしてまたさらにそのよさが分かることがあったりするから面白い。

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買い始めてすぐ輸入盤と日本盤との違いがあることに気付いた。まずはレコード盤を包む袋が日本のレコードではビニール製だったが輸入盤は紙製の袋だった。12インチEPなどはジャケットに直接入っていることもあった。輸入盤は歌詞カードや解説文などはないことが多く、そして日本盤では当たり前の「帯」が付いていなかった。洋楽ばかり聴いていた当時、表に日本語があるのがあまり好きではなくて、また輸入盤がカッコいいと思っていたことから日本盤を買っても「帯」を外して折って中に入れたり捨ててしまったものもあった。海外のバンドのアルバムタイトルなどを日本国内向けに独特な表現で邦題が付いていることは本当に面白い事なんだけど、その時の海外志向が強かった中学生の自分には残念ながらその良さや趣(おもむき)が分からなかったということだ。当時買ったレコードを見ると「帯」を作品の一部ととらえず丁寧に扱わなかったり無くなってしまっていることを残念に思うが若気の至りということで仕方がない。

【中学当時リリース国内盤:帯紛失】

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レコードを買っていた中学生の頃はまだ一般的にレコードが主流だったからCDのことは意識していなかったけど、その存在を知ったのはそれよりも前のことになる。小学6年生の終わり頃、近くのオーディオ専門店でやっていたナショナル(Technics)の展示会を見に行ったことがあってその時に知り合いの電気屋さんのおじさんに「これからレコードはこれに変わるよ」って説明されたのが初めてCDというものを目に(耳に)した瞬間だった。音がいいことや高速で回転すること、レコードより小さくなることなどを説明されたり見せてもらった記憶があるけどまだ小学生だった自分にはピンとこなかった。身近でCDが一般的になり広がってきたのは高校生になった頃だったように思う。田舎(福井)だったからそういう変化については都会に比べて遅れていたに違いないが。ただ自分はレコードの方が好きだったから周りがCDを聴き始めたり買い始めていても、高校時代はレコードを買っていたし、輸入盤に関していえばまだその頃はレコードしかないことも多かった気がする。大学で上京してからもそのこだわりは持っていたけど、寮生活(体育会)になりレコードプレーヤーを持ち込むことが出来ず、寮で聴けるのはカセットテープのみ。いつも転がり込んでいた東京にいた友人が持っていたのがCDコンポだったということがCDを買うようになったきっかけだった。CDを買って友人のところでカセットにダビングして普段はラジカセやポータブルカセットプレーヤーで聴いていた。その後はリリースされる音源自体がレコードからCD中心になり自然にCDを買う方が多くなっていった。CDも輸入盤やインディーズ系を買うことが多かったけど日本盤には「帯」があった。レコードはずっとジャケットに付けたままにできるのに対してCDは開封後は固定されず外れてしまうので歌詞カードの中に挟んだりしておいたけど角が折れたり傷んだりしてしまったりした。さすがに子供のころのように捨てるようなことはしなかったけど不注意から無くなってしまうこともしばしばあった。

【大学当時 / 国内盤CD:帯あり】

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90年代に始めた自分のバンドのCDは自身のレーベルで輸入盤と同じ帯なしのシンプルな形でリリースしてきた。「帯」を付けるようになったのは2013年、しばらくライブを休んでいて10年以上ぶりに活発なバンド活動を再開する最初のリリースSTUPID PLOTSの50曲収録ディスコグラフィー盤が初めてだった。そのリリースをする時に相談をしたレーベルを運営している友人が「最近は10年前とは違ってCDが売れなくなって、情報を少しでも分かりやすくする「帯」は付けた方がいいですよ」という状況の変化からのアドバイスがあったからだった。そしてそれ以降のリリースはほとんど帯付きでのリリースになった。

Sakuraの2nd  CD/WHEREABOUTSリリースの2019年にはさらに状況の変化が進んでサブスクで音楽を聴くという形が主流化していた。そして2020年、Sakuraの3rd CD/ETERNAL RIDDLEリリースの頃にはまたさらに状況は進んでいた。だから今回は今の時代に合った聴き方でより多くの人に聴いてほしいという想いから配信リリースをすることを前提にしながら計画した。ただやはりリリースの形としてはあくまでもCDを中心に考えていて、デザインはこれまで同様いつもデザインを担当してくれているSakuraの姉とSakura本人とでいろいろ話し合って決めた。

今回のCD/Sakura/ETERNAL RIDDLEのデザインは「雲を干す」という心情を表すイメージのデザインで、トータルでストーリーを連想させるようになっている。オレンジ色のCD盤面の雲の絵はサイドの洗濯ひもをバックに合わせるとジャケット同様に雲を干しているようになっていて、CDを外すと洗濯ひもと洗濯ばさみだけになって干し終わった状態になるようにデザインされている。オレンジ色の盤面は4曲目に収録されているSakuraが大自然の中で開催されている”PUNK合宿GIG”を想って書いた「Home」の歌詞の一説「オレンジ色の夕日」を表している。

【Sakura/ ETERNAL RIDDLE/帯付き】

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そして今回、自分のアイデアを一つ加えてもらった。あまり見ることもない帯の裏側(内側)に、ちょっとしたデザインをして「帯」をトレイ内側の絵と組み合わせることができる仕組みにした。普段はそれほど重要視されず開封した後はほとんど見ることがない「帯」を、外した後も作品のデザインの一部になるようにした。そしてそこには「帯」が傷んだり無くなったりしてしまわないよう大切に保管できる場所に誘う(いざなう)という意図もあった。

この話は配信リリース解禁後にしようと決めていた。ここまで長い文を読んでもらってこんな些細な「オチ」かー。って声が聞こえてくるようだけど、なるほどーって思ってもらえたり、帯捨てなきゃよかったーって思ってもらったり(笑)こんな小さなことでもちょっとした話の「ネタ」になったり、また改めてデザインを見ながらCDを聴いてもらえたりしたら嬉しい。

【帯をセットした状態】

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デザインは見えないように画像処理してあります

CDの需要がどんどん減ってきていると聞く。そしてレコードやカセットの人気が復活しているらしい。CDが最近のレコードやカセットのような求め方をされるには”時間の経過”が必要だろうから気長に待たないといけないだろうと思う。音楽の楽しみ方は次の段階に入ってきていてもう少しするとCDのことをほとんど知らない世代になっていくだろう。自分の娘たちの世代でもすでにCDを聴くコンポなどの機器を持っていない人が多いらしい。時代の変化に合わせて自然に流行や生活スタイルまでもが目まぐるしく変わっていく。音楽を取り巻く環境も例外なく常に変化していく。ただ周りが変化しても自分自身は変わらなかったり変われなかったり、あるいはそのスピードに追いつけないことがあってもそれはそれでいいのではないかと思う。10代の頃から長い間レコードやCDを買っていると音楽と同時にジャケットのデザインや買った当時の事まで思い出す。自分があとどれだけ作品を作ってリリースできるかは分からないけど、もしまた機会が持てたなら時代錯誤であっても、CDを手にしてくれた人がジャケットや歌詞カードを見ながら曲を聴いてくれている光景を思い浮かべて、その人の記憶にずっと残るような作品を作りたいと思っている。そして新しい音楽の聴き方もこれから楽しんでいけたらと思っている。

最後に、中学生時代に買った日本盤のレコード飛び出すディー・スナイダー。作り手の音以外の部分にもこだわる気合マックスの作品(笑)最高!

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TEXT : 山口ショウゴ / ROADSIDE RECORDS . STUPID PLOTS  /  March 2021

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